COLUMN
太陽光発電コラム

2018/12/10

太陽光発電設備と法律

太陽光発電設備の建設について、過去「規制がなかった」「緩かった」などと揶揄されている。
そして、それを証明するかのように、昨今の規制強化は業界内部にいても「ちょっと待って!」と言いたいくらいにドラスティックに進められている。

 

果たして太陽光発電設備の規制は緩かったのか。今回はそのあたりを探ってみようと思う。

 

 

太陽光発電設備と法律

日本は〇〇国家。さて、〇〇に入る文字は?

こう聞かれて、皆さんは何と答えるだろうか。
「平和」とか「法治」あたりが回答として多いのではないだろうか。
日本は法治国家であり、これについては皆さん、賛成していただけるだろう。

 

ということは、生活のインフラに関わるような設備が設置されるのに、何の法律、条令、基準もなく設置できるわけがない。

 

このサイトのテーマは「太陽光発電」なので、法制概論やら憲法論やらはすっとばして、「太陽光発電設備を設置するのにバックグラウンドとなる法律」を見てみよう。

 

まず、太陽光発電設備とはなにか、である。
これは名前の通り、「発電設備」であり「電気の設備」だ。すると「発電設備」を定義する法律が基になる。これは「電気事業法」であり、これに基づいて規定された各種省令、施行令、施行規則が「設備の法的根拠」になる。先ごろ、JIS C:8955 2017に準拠して耳にすることが多い「電気設備の技術基準」は、「省令」、正しくは「電気設備に関する技術基準を定める省令」:通商産業省令 第52号 という。現 経産省が定める法令だ。

 

太陽光発電設備を取り締まる法律

つまり太陽光発電設備は「電気設備の技術基準」に適合していなければならず、それは「電気事業法」に規定されている。

 

ところが、「電気設備の技術基準」には罰則がない。あくまで電気設備が安全に使用できるよう、事故を起こさないように技術の「基準」を定めている省令だ。「電気設備の技術基準」は、ガイドラインではない。順守すべき「法令」だ。

 

一段掘り下げ、「電気事業法」には「罰則規定」が設けられている。多くは過料(行政罰、罰金)か罰金だが、一部懲役も規定されている。

 

緩んでいたのは

どうだろう。懲役を含む罰則が規定されて法律に基づく省令に定義された設備は、「規制がない」「規制が緩い」といえるだろうか。

 

筆者が思うに「電気設備の技術基準」という言葉の表面だけを見てしまい、それが「省令」=「法令」であると認識しないで施工した業者の罪、ではないだろうか。断っておくが、筆者は行政擁護派ではない。

 

基準を理解しないで施工した業者の責任は重大だ。しかし、それを管理監督しなかった(できなかった)行政の責任はもっと重い。この部分に関しては「法治」ならぬ「放置国家」だ。

 

このところ毎年、「規制強化」しているような、より細かい基準が発表・施行されているのは、いままで「放置」していたものを、きっちり「基準に適合」させるための手段にすぎないと思える。当たり前と言えばそうだが、一を聞いて十を知るがごとく、電気設備基準が隅々まで順守されていればこんな後追いは発生しないだろう。なにしろ「電気設備基準」には「電気設備技術基準とその解釈」やら「電気設備技術基準の解釈の解説」といった本が出版されているほどだ。ひとつひとつ「この基準はこういう意味ですよ。この意味はこうなんですよ」と説明してもらわないことには筆者には煩雑すぎるのだ、この技術基準は。

 

「ハズレ」の太陽光発電設備を買わないために

ひところ、太陽光発電関連の事業社の倒産が相次いだ。倒産は2016年がピークであり、現在、事業社数は増えてきつつある。言い換えれば、この業界から去るべき会社は去り、業界に生き残っている会社、参入してくる会社は「やるべきことはできる」会社であると判断していいだろう。

 

購入しようとする太陽光発電所のモノサシの一つとして、施工業者の「施工基準書」や「施工手順書」の提示を求めてみるのがいい。出せない、出てこないようなら要注意どころかNG物件と判断してもいいだろう。また、現地確認をしないで購入するのはもってのほかだ。

 

仲介者にも「この客にはうっかりしたものは販売できない」と思ってもらえる。

 

さて、ここまで規制について書いてきたが、決して「規制が緩かった」のではないことはご理解いただけただろうか。緩かったのは「適当な施工をした業者の意識」であり、行政の「性善説に基づいた?施工業者について根拠のない信頼感」だった。

 

ところで、本文の前半「設備」が太字にしてある。「設備」についての法的根拠はこんなところだが、そのほかの部分「土地売買」「開発」については、また稿を改めて述べてみたい。