COLUMN
太陽光発電コラム

2018/11/21

太陽光発電設備の危険性とはーその2

2018年の6月から10月まで、日本各地を様々な天災が襲った。
筆者の生活圏では、7月から9月まで毎月1回、自然災害による早退があった。これは異常な頻度であり、やはり今年は「異常気象」だったのだと思う。

 

太陽光発電設備は、JISによる強度の基準が示され、設計にはこれを順守しなければならない。しかし、基準以上の応力がかかれば破損は免れないし、壊れれば様々な危険が周囲に及ぶ。

 

今回は以前のコラム、「太陽光発電設備の危険性とは」をもう少し深掘りしてみよう。

太陽光発電設備の危険性とはーその2

太陽光発電所が破損していたら

前述のコラムの通り、まず、近寄らないことだ。
日中は太陽光発電設備から電気が発生し、周囲に漏電している可能性がある。電力会社や防災活動の専門家にゆだねよう

 

では、そのプロフェッショナルたちはどういう対応をするのか。消防庁・消防研究センターが2014年3月に公表した「太陽光発電システム火災と消防活動における安全対策」という報告書がある。この報告書は158ページに及ぶ。設備の機器構成から火災事例、絶縁(感電)対策から火災時に起こりうる破損の実験、貴重な情報が惜しげもなく提供されている。(2018年10月現在、インターネットからダウンロード可能)

 

要約すると、「できれば遮光しろ、太陽光発電設備があることを把握して注意して消火活動に当たれ」といったところ。例えば棒状の放水ではなく、霧状・滴状にして放水せよ、など、細かな対応が列挙されている。

 

興味深いのは、東日本大震災時の火災事例の紹介である。設備破損後、2週間後や2か月後に出火していたりする。津波による海水の浸食をうけて絶縁が劣化し、微小電流が流れ続けて発熱し、やがて火が出た、というような事例である。放置された、破損した太陽光発電設備の危険性が判る。

 

実際に消防庁に聞いてみたところ「現地指揮官の判断に従い消火活動をおこないますので、個別の事例についてはお答えできません」とのこと。すると我々にできることは、ここに太陽光発電設備がある、これくらいの設備で、パワコンが何台あって、といった情報を正確に消防隊に伝えることが重要になる。

 

太陽光発電設備が燃えたら

ご存知の方もおられようが、太陽光発電モジュールにおいて、廃棄時、管理すべき有害物質(鉛・ヒ素・セレン・カドミウム)がJPEAによって規定されている。そうなると、「太陽光発電モジュールが燃えた場合、有害な煙となって周辺を汚染するのではないか」とか「破損した部分から周辺環境を汚染するのでは」という危惧を抱く方もいるだろう。

前述の報告書で、モジュールを燃焼させた実験結果が記載されている。この、排出された煙(燃焼ガス)の中に上記4物質は含まれていないようだ(質量分析装置等による検査)。だからといって煙が無害、というわけではなく、管理物質は検出されなかった、ということなので、一般常識のレベルで、火災で発生した煙は危険なので勘違いはされないように。

また筆者が某モジュールメーカーに問い合わせたところ「破損モジュールが管理物質で周辺環境を汚染することはありません」という回答を得ている。

 

実際の消防の現場では

覚えておられる諸兄もおられよう。オフィス消耗品類の大手物流会社の倉庫が火災になり、鎮火まで12日を要したことがあった。ニュース映像で消火活動を見た記憶もある。これについては、屋根上に太陽光発電設備が載っており「太陽光発電設備があるので感電の危険がある。うかつに水をかけられないので、消火に時間がかかった」という話を聞いたことがある。

筆者が改めて調べてみたところ

・倉庫内には段ボール・紙類をはじめ、可燃物が相当量蓄積されていた。

・こういった場合、火元とともに、窓を狙って放水し内部を水に浸して延焼を防ぐとともに、建屋の温度を下げる、という方法をとる。

・ところが、この建築物は窓の数が少なく、また小さかった。

・このため、建屋内部に効率的に放水することができず、鎮火に時間を要した。

・この一連の動きが「太陽光発電設備を避けて放水しているため、消火活動がはかどらない」かのように見えてしまった、というのが真相のようだ。

 

考えてみれば、倉庫だろうが住宅だろうが、電気は通っているのであり、火災になれば電気設備は少なからず破損するだろう。破損すれば漏電は起きるし、そういった火災現場は、消防隊にとっては毎度のことであろう。もちろん、太陽光発電設備がある、と認識して消火活動を行うことが一番大切だと思うが、消防隊は太陽光発電設備があるから消火活動を手控えることはしない、ということである。

 

必要以上に恐れる必要はないが、知らないから、判らないからでは済まされない。発電事業者にとって正確な情報を入手することも大切だが、特に災害時には、設備情報を発信することも大切なことである。

 

 

参考:

消防庁 消防研究センター. 太陽光発電システム火災と消防活動における安全対策. 2014. http://nrifd.fdma.go.jp/publication/gijutsushiryo/gijutsushiryo_81_120/files/shiryo_no83.pdf