COLUMN
太陽光発電コラム

2018/10/09

最近話題の「環境価値」とは?

最近、耳にすることが増えてきた「環境価値」。
いくつかの種類があり、それぞれ目的が異なる。今回はその「環境価値」にフォーカスしてみようと思う。

取引できる「環境価値」

環境価値とは、「太陽光や風力などの自然エネルギーによる電気は、電気そのものの価値に加え、CO2排出を削減するという「環境価値」を持っているとみなされる」(Web:朝日新聞掲載「キーワード」の解説より)

 

日本では「Jクレジット」「グリーン電力証書」「非化石価値」がこれに該当する。この3つの制度について名前は知っている方も多いと思うが、それぞれ、どう違うのか。ざっと概略を述べてみよう。

 

「Jクレジット」は、削減したCO2の量に対して創出されるクレジットであり、1Ton-CO2eあたりいくら、という単位で取引される。制度の主体は環境省で、事業を「プロジェクト」として申請し、一定期間の実績を事務局に申請し、精査された後にクレジットとして創出される。事務局は地域ごと民間に委託されている。売買はブローカーやマーケットにて行われる。

 

「グリーン電力証書」は、自家消費した電力量に対して発行される。制度の主体は一般社団法人 日本品質保証機構が担っているが、環境省が価値を担保している。認定された設備の自家消費電力量に対して証券が発行される。売買はブローカーやマーケットにて行われる。

 

「非化石価値」は、系統に流れている電力に対して付与される。原子力発電を含む、非化石由来の電力に付与されるものだ。売買は非化石価値市場で行われる。

 

要するに「環境価値」とは電気そのものと、それが持つ例えば「太陽光発電由来」という「価値」を切り離して流通させよう、ということだ。この考えは、「紙幣」に似ている。「一万円紙幣」の価値は「紙幣そのもの」にあるのではなく「国家がこの紙に一万円の価値を認めて流通させている」ところに「価値」がある。そして「一万円紙幣」は、「一万円分の金」を購入することができ、「一万円分の金」は普遍的な価値を持つ。国によって値段は変わるかもしれないが、「金 2.5g」は世界中どこに行っても「金 2.5g」の価値だ。1000kwの電力もまた、世界中どこでも1000kwの価値がある。

 

しかし電線から入ってくる電気はその「発電由来」によって仕分けることは不可能だ。コンセントから出てくる電気を「ウチは環境を考えているんで」といって再エネ由来だけにすることはできない。石炭火力由来だろうが、原子力由来だろうが、そのとき系統に入力されている電力が取り出されてくる。

 

そこで電気の使用者が使用量分の「環境価値」を購入しておけば、「ウチで使用する電力は100%再エネ由来です!」と言えるようになる。「当社はカーボンオフセットによりCO2排出量ゼロです」とはそういうことだ。

 

環境価値の目的は

Jクレジットも、グリーン電力証書も基本的なねらいは同じである。「中小企業」に「環境価値」を創出してもらい、大企業がそれを買い上げてカーボンオフセットをする。「環境価値」の代金は「中小企業」に資金として活用してもらいたい、という図式だ。

 

「非化石価値」は、小売り電力業者が購入して活用することで、FIT制度による国民負担を軽減する役割も持つ。

 

ところが、「非化石価値」の「非化石由来」とは「石油や石炭、天然ガスなどの化石燃料由来ではない(カーボンフリー)」と言っているだけのこと。具体的にはカーボンフリーな「原子力発電」もこの「非化石価値」を持っているのである。

 

燃料には放射性物質の半減期が2万4千年のプルトニウムや7億年のウランを使用し、廃棄物は地下数百メートルに埋設処分しなければならない「原子力発電」。この「非化石価値」に「環境価値」があるかどうか。じっくり考えていただきたい。

 

出典:経済産業省資源エネルギー庁「非化石価値取引市場の創設について」(参照2018-10-04)
出典:神奈川県「令和3年度自家消費型太陽光発電等導入費補助金」

 


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