COLUMN
太陽光発電コラム

2018/09/10

太陽光発電設備の設計基準と事業者評価制度

今年7月、太陽光発電設備の設計基準が改訂された。

その項目の詳細については他稿に譲ることにして、設計基準と事業者評価制度の関わりを述べてみたい。

太陽光発電設備の設計基準と事業者評価制度

(出典:NEDO 国立研究開発法人 新エネルギー・産業技術総合開発機構 

今回の改訂の影響は

今回の改訂は、ざっくり言ってしまうと、JIS C 8955:2017に準拠しなければならない、ということになり、もっとも話題に上がっているのが、架台強度の設計要件がより厳しくなった、ということである。

 

EPC業者の目線で考えると、基礎、架台の強度指標が明確になり、構造計算のエビデンスを用意しなければならないこととなり、当然、メーカーにその書類を求めることとなる。

 

日本国内のメーカーを採用した場合、EPC業者にとってエビデンスを求めるのはさほどの困難ではないだろう。ただ、外国製のアルミ架台については、日本のJIS(日本工業規格)に基づく強度計算書と、この計算書に基づいて製造されている製品の納入を求めなければならない。EPC業者も、受入検査の実施や場合によっては出荷検査の立ち合いなどを行う必要があるかもしれない。いずれにせよJIS規格の詳細を理解して、製品に反映させることは海外のメーカーにとってはなかなかハードルが高い作業となりそうだ。

 

建設コストへの影響

コスト面では、設計基準改訂前には、海外メーカーのアルミ架台は、最低でもコストが2倍以上になってしまうのではないか、とささやかれていたが、いざフタを開けてみると、1.2倍から最大1.6倍程度の上がり幅で抑えてきている。このコストアップは、材料費はもちろん、設計から生産ラインの見直し、製造にかかわる金型等の入れ替えも含めて製品価格に反映されているものだ。各海外メーカーとも、ある程度の納入件数でペイできるような価格設定を行っているはずなので、将来、価格は元に戻る可能性はある。

 

時々、単管とクランプで組み上げられた太陽光発電設備の架台を見かけることがある。おそらく太陽光発電設備建設ラッシュの初期に建設されたものと推測するが、もし今後、単管架台で設置しようとした場合、構造計算書を作成する必要がある。ところが、架台の各接合点は基本的に「剛接合」でなければならないので、単管クランプのような「力を加えられたら滑る」ような構造や、ボルト1本で縫い留めている「力を加えたら動く」構造では規格を満足できないことになる。

 

うがった言い方をすると「木材で製作した架台でも、構造計算書によって強度を証明できれば設置可能」ということなのだ。

 

ちなみに「構造計算書」の作成を外部委託した場合、委託先は「一級建築士事務所」、費用は1件数十万円、というのが相場のようだ。

 

事業者評価はどう活用されるのか

ここまでしつこく「規格、エビデンス」について語るのは、先般公表された「太陽光発電設備の事業者評価制度」において、これらのエビデンスを求められているからだ。この制度は、太陽光発電設備の新規購入や売買の際に、土地売買から設計、建築、電気設備、O&Mまでの評価を行うように求めており、この結果「適切ではない」と判断されると、銀行融資や太陽光発電設備そのものの資産価値評価に直接かかわってくる。

 

この評価結果を活用するのは、太陽光発電事業者でもなく、EPC業者でもない。

 

たとえば銀行の融資担当者であったり、不動産鑑定士などが融資を検討したり、資産価値を評定するプロセスの中で活用することになる。また、太陽光発電設備が第三者に損害を与えてしまった場合、事業者・オーナーの過失がないことを証明するためにも活用することは十分考えられる。

 

既設の太陽光発電設備はどう評価されるか

さて、ここで注意しなければならないのは、「新設計基準制定前の設備」についても、「(将来を含めた)現行の基準で評価」せざるを得ない状況になるだろう、ということである。旧設計基準でOKだったから、設置当時の基準で規定していなかったから、という言い訳は「適切ではない」設備を容認する理由にはならないのである。

 

各事業者は何をしておかなければならないのか

転ばぬ先の杖。まずは太陽光発電設備の「完成図書(竣工図書)」「土地権利権原の証書」「O&M契約書と報告書」を取りまとめ、整理しておく事をお勧めする。

 

参考:

 “太陽光発電システム設計ガイドラインを策定”. NEDO.  (参照2018-09-27)

 “「太陽光発電事業の評価ガイド」を公表“. 日本商工会議所. (参照2018-09-27)